心に闇はなくただ心だけがある

知人が何らかの事件を起こしたとして、「そんなことをする人には見えなかった」とコメントする自信がない。いかにも何かやらかしそうな人というのが珍しいのであって、ほとんどの犯罪者はそんなことをする人には見えないのではないか。だから、「そんなことをする人には見えなかった」は何も言っていないのと同じだと思うし、逆に考えれば「そんなことをしそうにない人」など滅多にいないとも言える。

昭和11年(1936)5月18日、阿部定は石田吉蔵を殺害した。妻の元へ帰したくなかったから殺したと取り調べには供述したが、戦後になってからの週刊誌の取材にはもののはずみで気がついたら殺していたと答えている。こちらが真相に近いのではないかとわたしは思っている。