犬吉は外の小屋で、猿彦は電柱の上で寝泊まりするようになる

 鼠実が天井裏に潜んだのはネズミだからなのだと思うが、それにしてもやり過ぎだしあの足でどうやって登ったのか。草野誼の漫画には真面目な場面なのか笑えばいいのかよくわからないシークエンスがたまに出て来るように思うが、ここはその代表ではないか。そして、作者としては「やっぱ鼠だから天井裏でしょ」とまでは考えているが、それが真剣なのかギャグなのか、読者にどう読んで欲しいのかまでは考えていないとおもう。それ以上でも以下でもないというとぼけた魅力が、草野漫画にはある。

 

向井家で不思議なのは、土地の因襲をきっぱり拒絶しているあの夫が自分の妻と母の現状について何も思わないのだろうかということだが、これも鼠実の生態? から説明がつく。かれは普段から天井裏で暮らしており、自分の家の中を文字通りの意味であまり見ていないのではないか。めったに下に降りて来ない鼠実は国子の居室の天井裏に寝起きしている。はい! ボクはいつでも国子と一緒です!! 食事などは天井板を外した穴から差し入れられており、あたかも国子に飼育されているような格好だが、彼女はああいう性格なのでその状況を特に疑問に思っていないのだ。まったくもー!! あなたってお気楽なんだから!

 

しかし冗談は別にして真面目に考えると、トキ子や毛者衆を疑うことは出来ても自分の家だけは例外で何も見えていないという解釈が正しいのでしょうね。