戸波茜がいつか履くガラスの靴

向井家と戸波家はそれぞれの家庭問題が最後まで解決されないが、こういう圧倒的なカタルシスの後にも抜きがたく残る刺のようなものが、「かんかん橋」世界とわたしたちの世界をつないでいるのだとおもう。向井家のことは置いておいて戸波について考えると、和解とも別離とも異なった第三の道を歩むのではないか、と想像している。

 

※43話や52話の描写から見て、国子はまだ古物集めをやめていない。

 

姑としては町の伝説となった茜をそう無下にも出来なくなるし、川南説の呪縛が無くなったいま夫も次第に真実に目を開くかも知れない。そうは言っても人間はそうそう変わらないもの、基本的にはこれまで通りのつらい日々が続くのだろう。しかし戸波の内面は決定的に変わっていて、トキ子と闘い抜いた誇りや仲間との絆が彼女を支えていくのではないだろうか。「もう無力な嫁じゃないんだ!!」という台詞を他の誰でもない戸波に言わせたのは、作者として戸波個人の問題を解決できなかったのが心残りだったのかなと思わせられるのだ。

こうして自分の世界を持つことの大切さに気づいた彼女は、いずれ表現活動を始めるかも知れない。萌&権藤木と対決した時のやけにポエジーな台詞から察するに戸波にはその素質がある。姑や夫の知らないところでブロガーや同人作家として名を馳せ、あわよくば多少のへそくりを持つことも出来るだろう。戸波の作った同人誌に鮎はドン引きし、権藤木はドハマりする、そんな未来が私には見える。

 

※心配なのは彼女の傷が完治しているかどうかで、万一左目に後遺症が残っていると絵にしても文章にしてもつらいだろうなと思う。

  

それにしても気になるのは、頭頂部のアホ毛である。全話チェックしてみたが、アホ毛を描き忘れているコマは一つもない。思うにあれは毛ではなくもっと硬質の何か、たとえばネジのつまみみたいなものではないか。もし「かんかん橋2」があるとしたら、それは戸波のアホ毛が実はネジだったことが発覚するところから始まるだろう。本人も気づいていなかったが、彼女は最先端のテクノロジーを駆使して作られたゼンマイ式ロボットだったのだ。もちろん、権藤木のおだんごはパカッと開いてびっくりどっきりメカが出て来るようになる。