ラじゃなくてアだっつーの!!

◆まえがき

二次創作です。音声ドラマの脚本を想定し、公式30話から32話の間あたりの話として作ってあります。

   

◆登場人物

美墨なぎさキュアブラック

雪城ほのかキュアホワイト

メップル

ミップル

藤田アカネ

レギーネ

ウィズダム

ベルゼイ・ガートルード

ジュナ

インコ

執事ザケンナー

執事ザケンナー

 

 1.公園で

〔効果音〕自動車の音、人の話し声、レギーネの足音。

レギーネ はあ、どうすればプリキュアに勝てるのか……。

アカネ いらっしゃい、いらっしゃーい、おいしいたこ焼きだよー。

レギーネ ん? あれはよく二人がいるたこ焼きの屋台……。そうだ、このへんの物陰で待ち伏せて……。

アカネ そこのお姉さーん、焼きたてのたこ焼きいかがですかー!

レギーネ ……(ちっ、面倒だな)

アカネ おいしいたこ焼き、いかがですかー?

レギーネ ……

アカネ あ、あの、無理なら無理しなくても……

〔効果音〕レギーネの腹が鳴る。

レギーネ あ、あの……

アカネ え?

レギーネ ひとつください……

 

2.アカネさんの屋台

〔効果音〕たこ焼きを焼く音

アカネ お客さん、初めてですよね。お近くにお住まいですか?

レギーネ 住まい……? ええと……

アカネ あ、プライバシーですよね。すみません、変なこと聞いちゃって!

レギーネ 住まい……どこだろう……(そういうの、設定を考えてなかった……)

アカネ ……? あ、あの、差し出がましいのですが、ひょっとして……何か訳ありでしょうか? ……なんちゃって。

レギーネ え?

アカネ つまり家出とか……あ! ひょっとして記憶喪失!?

レギーネ えっ? 

アカネ もしかして、帰る家がわからなくなってるんじゃ?

レギーネ あ、あの。帰る場所はわかりますから。私の家ってわけでもないけど……

アカネ 帰るけど家じゃない?

レギーネ あ、つまり……(しまった、ついバカ正直に……)

アカネ 無理に思い出そうとしない方がいいですよ。変なこと言うようだけど、無理に思い出してもどんな事情があるかわからないし……

レギーネ あ、あの、わたし本当に……

アカネ そうだ! 記憶が戻るまでさ、私のところにいたらいいよ。こう見えてもこの藤田アカネ、困ってる子を放っておくような了見でたこ焼き屋はやってないんだ。アハハ、なんちゃって。

レギーネ あ、あの……(ありえない……)

 

〔BGM〕サブタイトルの音楽

なぎさ、ほのか 闇色のオタフクソース!? レギーネたこ焼き屋さん!

 

3.帰り道

〔効果音〕学校のチャイム

なぎさ じゃあね、志穂、莉奈ー。

ほのか なぎさー。

なぎさ ほのか。科学部もいま終わったんだ。一緒に帰ろ。

ほのか うん。

〔効果音〕なぎさの腹が鳴る。

なぎさ あ、あははは、練習の後だから。

ほのか 運動部は大変ね。

なぎさ ご飯がおいしくなるけどね。そうそう、ポルンに明日の夕ご飯を予知してもらったらね、お父さんがお寿司に連れてってくれるんだって。

ほのか なぎさ、ポルンの力をそんなことに……。

なぎさ いいじゃない、減るもんじゃなし。

ほのか 減ったらどうするのよ。

メップル まったくなぎさは、あとさき考えなさ過ぎるメポ。

なぎさ なんですって!?

メップル 本当のことを言っただけメポ~。

なぎさ あのね。ちゃんと先のことを考えてたら、ポルンの予知に頼る必要なんかないでしょ!!

ミップル なんだかすごい理屈ミポ。

ほのか 考えてないのは認めるんだ……。

なぎさ えっ? あっ、そ、そうか……。あははは。とにかく、それだけ夕ご飯は大事ってことよ。

ほのか そ、そうね。お寿司はおいしいし。

なぎさ でしょ? 私ね、回転寿司ってだーいすき。でもお母さんが、ひとり十皿までしか駄目だって。でもさ、小学生の亮太が十皿なら、中学生の私は二十皿くらい食べてもよくない?

ほのか 二十皿……。あ、あのさ、なぎさはどんなお寿司が好きなの?

なぎさ 好きなお寿司かあ、たくさんあるなあ。

ほのか たとえば?

なぎさ ええとね、フライドポテト!

ほのか ポテト?

なぎさ からあげ!

ほのか からあげ?

なぎさ プリン!

ほのか ぜんぶお寿司じゃないじゃない。

なぎさ でも、ぜんぶお寿司屋さんにあるよ。

ほのか もう、なぎさったら。

なぎさ 明日はお寿司かあ。ね、今日はさ、アカネさんのとこ寄ってかない?

ほのか 今日も、でしょ。

なぎさ もう、ほのかは細かいなあ。で、どうするの? 行くでしょ?

ほのか もちろん!

なぎさ よーし!

 

4.アカネさんとレギーネ 

〔効果音〕たこ焼きを焼く音。

アカネ そうそう、そうやってクルっとひっくり返して……。おお、すごい! あんた筋がいいよ!

レギーネ (妙なことになった……)

アカネ 昼間はこうやって屋台の手伝いしてくれたら私も助かるし、夜は私の家に泊まったらいいよ。

レギーネ は、はい……。

〔効果音〕たこ焼きを焼く音。

アカネ いやあ、それにしても手際がいいなあ。初めてとは思えないよ。

レギーネ そ、そんなことは。

アカネ ん? 素人なのにたこ焼きを焼くのがうまい……。うーん、なんだろう。なんかひっかかるなー。

レギーネ え?

アカネ たこ焼き……初めてとは思えない手さばき……うーん、何かこう思い当たるような当たらないような……

レギーネ あ、あの、これはたまたま……(まずい、怪しまれてるのか?)

アカネ ああっ、あなたまさか……!!

レギーネ ううっ!?

アカネ 大阪出身なんじゃない?

レギーネ ……(帰りたい……)

 

5.レギーネとの遭遇

なぎさ こんにちはー、アカネさん……あれ? アカネさんじゃない?

レギーネ 私は、手伝いを……(プ、プリキュアの二人!)

ほのか 手伝い?

レギーネ て、手伝いっていうか留守番を……(気づいてない?)

〔効果音〕アカネが走って来る足音

アカネ あっ、あんたたち、いらっしゃい。

なぎさ アカネさん。

アカネ 待ってて、すぐに焼くから。

 〔効果音〕たこ焼きを焼く音。

アカネ この子ね、かわいそうなのよー。ほら、記憶喪失っていうの?

レギーネ ……(そんなことひとことも言ってないし……)

ほのか ええっ、何もおぼえてないんですか?

レギーネ はい……(私の顔をおぼえてないのはアンタたちでしょ……)

アカネ 唯一の手がかりは、大阪出身だっていうことなんだけど。

レギーネ ……(勝手に決められてるし)

なぎさ 大阪出身……それってほんとですか?

レギーネ は、はい? (なんなの。人をにらみつけて)

なぎさ 正直に答えて欲しいんです。

レギーネ 正直に……(うっ、今度こそ気づかれた?)

なぎさ お姉さん、もしかして。

レギーネ は、はい。

なぎさ お好み焼きを焼くのもうまいんじゃないですか!?

レギーネ は?

なぎさ ね、アカネさん、この人の記憶がずっと戻らなかったら、一緒にたこ焼きとお好み焼きの屋台をやったらすごくないですか? あー、どっちを食べよう。今から迷っちゃうよ~。

ほのか もうなぎさ、失礼よ。あ、あの、きっといつか名前もおうちも思い出すと思います! 人間が記憶を失っている状態にはいくつかの原因があって心因性でなければ脳で記憶をつかさどる部位は海馬って言うのですが

アカネ ストップ! ほのかもその辺にしときな! ごめんねー。この子たちも悪気はないっていうか、いつもはもっと……もっと……うーん、いつもこんな調子か?

レギーネ (なんなの、こいつら……)

 

6.邪悪な気配

メップル なぎさー。

ミップル ほのかー。

なぎさ あ、あのアカネさんごめんなさい。私たちあっちのベンチですわって待ってるから。

アカネ あ、そう?

〔効果音〕ふたり、小走りの足音。

ほのか どうしたの、ミップル。

ミップル いやな気配がするミポ!

メップル しかもすぐ近くメポ! 気をつけるメポ!

なぎさ 近くって……誰もいないよ?

ほのか そうよ、アカネさんの所に戻りましょう。

メップル メポ―。

 

7.レギーネ逆ギレ

〔効果音〕たこ焼きを焼く音。

なぎさ でね、アカネさん、今日の練習で弓子先輩が……

レギーネ (さっきは焦ったけど、本当に気づいてないみたい)

ほのか それでまた理科室を大破させちゃって……

レギーネ (例の二匹も私がわからないの?)

アカネ ……まー私も授業中は居眠りばかりしてたねー。

レギーネ (こいつら、全員バカなんじゃ……)

アカネ はい、お待ち。たこ焼き二人前ね!

ほのか わあ、おいしそう。

なぎさ もうお腹ぺこぺこ! いただきまーす!

レギーネ (もう辛抱たまらない!)

〔BGM〕「あなたなんてプリキュアってだけで、友だちでも何でもないんだから!」の時の音楽。

レギーネ ちょっと、おかしいと思わないの……。

なぎさ、ほのか、アカネ え?

レギーネ 私を見て何か思い出さない?

なぎさ、ほのか、アカネ は?

レギーネ 私を忘れるなって言ってんのよ!!

 

8.戦い

なぎさ な、何!?

ほのか 空が、急に暗く……

アカネ あ、何か猛烈に眠い……

なぎさ アカネさん!

ほのか 気を失ってるわ。

レギーネ そいつには眠ってもらったわ、戦いの邪魔だからね!

なぎさ なに言ってるの!?

レギーネ この姿なら思い出すかしら!?

〔効果音〕レギーネが本体を現す。

なぎさ あ、あんたは!

ほのか だましたわね!

レギーネ あんたたちが勝手に勘違いしてそっちのペースに巻き込んでたんでしょうが! でもお遊びはもう終わり!

ほのか なぎさ!

なぎさ うん!

〔BGM〕例の音楽

ほのか ガスの元栓しめなきゃ!

〔BGM〕例の音楽止まる。

なぎさ だああっ、そういう問題?

ほのか 火事になったら大変でしょ!

なぎさ はいはい。ええとガスボンベはと……閉めたよ。

レギーネ だから! 私を無視するなっつーの!!

メップル 二人とも何してるメポ! 早く!

ミップル 変身するミポ!

なぎさ じゃ、改めて……ほのか、行くよ!

〔BGM〕例の音楽

なぎさ、ほのか デュアルオーロラウェイブ!

キュアブラックキュアホワイト (例の名乗り)

〔効果音〕拳や蹴りのぶつかり合う音

キュアブラックキュアホワイト はあっ、はあっ。

レギーネ ふっ、もう息が上がってるの?

キュアブラック うるさいわね! ボイスドラマでアクションシーンをやったら こういう演出しかないでしょ! 私たちだって音の出る武器とかあればもうちょっとやりようがあるっちゅーの!

キュアホワイト なに言ってるのブラック……?

レギーネ そうよ、なに言ってるかぜんぜんわかんないわね!

キュアブラック あっ、二人とも知らないふり? 私だけ悪者? そういうの、「ママが子をぶってる」って言うんだよ。

キュアホワイト ブラック……もしかして「カマトトぶってる」って言いたいの?

キュアブラック ううう……わかったんならどっちでもいいでしょ!!

メップル おい、仲間割れしてる場合じゃないメポ!

ミップル そうミポ! ホワイトもなんか敵と通じ合っちゃってるミポ!

キュアブラック ホワイト、一気に片付けるよ!

キュアホワイト うん!

キュアブラック ブラックサンダー

キュアホワイト ホワイトサンダー

キュアホワイト プリキュアの美しき魂が、

キュアブラック 邪悪な心を打ち砕く。

キュアブラックキュアホワイト プリキュアマーブルスクリュー

レギーネ くっ、これまでか!

〔効果音〕レギーネ撤退。

キュアブラック すごい、プリキュアレインボーブレス無しで撃退しちゃった。

キュアホワイト 同人ドラマにスポンサーは関係ないから!

キュアブラック あああああ、それ言っちゃったら……

メップル それだけは駄目だと思うメポ。

ミップル みんなが言うまい言うまいとしていたことミポ~。

キュアブラック ホワイトってさ、いちばん言っちゃいけないことをさらっと言うよね。

キュアホワイト 大丈夫だって! さっきブラックが商品名言ったからちゃんと仁義は切ってるわよ!

キュアブラック だからさー。

 

9.ま、いいか!

アカネ うーん。

なぎさ アカネさん。

ほのか よかった。気がついたみたい。

アカネ あれ? 私どうしたんだっけ?

なぎさ あ、あの、すごく眠いから5分だけ横になるって……。

ほのか そ、そうですよ。アカネさんすごく疲れてるみたいでしたよ。

アカネ うーん? そう? って、あれ、あの子は?

なぎさ あ、えーと、急に記憶が戻ったとかで。

ほのか しかも家族の方が迎えに来て。

なぎさ そ、そう。その、大阪から……

アカネ そっかあ、なんだかわかんないけど、よかった、よかった。

なぎさ、ほのか はあ……(ため息)

なぎさ とにかく、せっかく焼いてもらったたこ焼き食べようか。あれ? 私のたこ焼きは?

ほのか 私は知らないよ。

なぎさ わかってる。ほのかは盗み食いなんかしないもん。

ほのか そ、そう言ってもらえるのは嬉しいけど、じゃあなんで怖い目で私を見てるの……。

なぎさ あ、その、疑ってるわけじゃないけどさ。おいしそうだなあ、って。あははは。

ほのか もう、私の半分あげるから!

なぎさ ほんと? さすがほのか、話せるなあ。

アカネ あんたたち、本当に仲いいよねえ。前はあんなに他人行儀だったのに。

なぎさ、ほのか あ、あははは。

アカネ よくわかんないけどさ、無くなったものはもういっぺん作ればいいんだよ。一人前くらいまた焼いたげるって。私のおごりでね!

なぎさ、ほのか いいんですか!?

アカネ いいって、いいって、今日は特別だよ。

なぎさ、ほのか ラッキー!!

アカネ  やれやれ、なんか変な日だったけど……ま、いいか!

 

10.仲良く分けよう

〔BGM〕例の館の音楽

ベルゼイ レギーネ、なんだそれは。

レギーネ たこ焼き……撤退する時に持って来た……。

ジュナ うまそうだな。

レギーネ 8つだから3人で分けるのが難しい……。

ベルゼイ、ジュナ え?

レギーネ 3人で分けるのが難しい!

ベルゼイ、ジュナ わわっ。

ウィズダム 私も入れれば一人2個だぞ……。

インコ 一人2個! 一人2個!

執事ザケンナー1 僕たちも食べたいザケンナー

執事ザケンナー2 ザケンナー

ジュナ 結局、何人で食べることになるんだ?

レギーネ インコは、たこ焼き食べないと思う……。

執事ザケンナー1 ザケンナーはたこ焼きも食べるザケンナー

執事ザケンナー2 ザケンナー

ウィズダム 私も食べたいぞ。

インコ 私も! 私も!

ジュナ 8わる3、8わる6……どうやっても余りが出る……!

レギーネ 早くしないと冷めちゃう……。

インコ 冷めちゃう! 冷めちゃう!

ベルゼイ 静かにせんかー!!

 

―おしまい―

 

◆おぼえがき

公式の雰囲気を再現しつつ、本編のどのエピソードよりもバカバカしい話にすることを目標に書きました。反省点としてはストーリーらしいストーリーが無かったこと、肝心な部分のギャグを楽屋オチにしてしまったこと、でしょうか。

この脚本では茶化してしまいましたが、公式30話以降でもレインボーブレス無しで勝利している戦いはあり、プリキュア自身の成長がうまく描かれています。そういった製作者の工夫も好きな要素の一つであること、野暮ではありますが念のため申し添えておきます。

実はこの部分のホワイトの台詞は、

レインボーストームの口上を書くのが恥ずかしかったらしいわよ、作者が」

というのも考えていましたが、どのみち楽屋オチではあります。

最後の館の場面は省略しても話は完結するようになっています。その場合はなぎさとほのかのやり取りの中で、たこ焼きがレギーネに奪われたことを疑う台詞を入れておけばよいでしょう。

 

ちなみに、「ふたりはプリキュア」のアポリアとして、中学生の小遣いであんなに頻繁にたこ焼きが食べられるものなのか? 一方アカネさんはあんなにしょっちゅうおまけして大丈夫なのか? ということがあります。この話ではレギーネに練習させたりなぎさにおごったりとアカネさんの持ち出しが多くなっていますが、謎は謎のままとして特に合理的な説明はしませんでした。